導入病院の事例が示す現場の手応え
AI読影や画像診断支援の導入は、日本国内でも着実に広がっています。
例えば、胸部X線画像を解析するAI「EIRL Chest Screening」では、読影の感度が向上し、非専門医の診断精度も大きく改善されたという成果が報告されています。
地域クリニックなど専門医が不足しがちな現場でも、見逃しリスクの低減につながる取り組みです。
また、がん研究会有明病院とGoogleが共同で行ったマンモグラフィーAIの活用では、AIをセカンドリーダーとして活用することで検出精度を7.6%改善しています。
こうした成果は、医師の判断を補える実用性の高さを端的に表しています。
さらに、富士フイルムは、ADR(腺腫検出率)や見逃し率を確認できる「大腸ポリープ検出AI「CAD EYE®」を提供しています。
このシステムはリアルタイムに病変をハイライトし、内視鏡医の視線を自然に誘導するため、操作面でも優れた使いやすさが特徴です。
導入による効果とは何か
AI導入による最大の効果は、診断精度の向上です。
専門医が少ない地域や、非専門医が多く働く施設では、AIの支援が正確な判断を支える存在になっています。
それだけでなく、診断時間の短縮にも効果があり、医師がより多くの情報と時間を患者ケアに充てられるようになる点も評価されています。
加えて、業務負担の軽減が現場に大きな余裕を生み出しているのも魅力です。
事務作業や読影補助をAIが担うことで、医師や技師がコア業務に集中できるようになり、働き方にも好影響が出ることが期待されます。
厚生労働省やDX推進の流れも後押しとなっていて、補助金や支援制度が活用できるケースも増加傾向にあります。
現場が抱える課題と運用のハードル
とはいえ、AI導入には課題も少なくありません。まず費用面の負担です。
AIシステムそのものだけでなく、サーバー、保守、アップデートなど運用コストも考慮する必要があり、即時的な費用対効果が見えにくいケースもあります。
情報セキュリティや医療データの管理も重要です。
患者情報は漏洩リスクが高いため、データ保存場所の管理、外部サービスの信頼性、法令遵守の体制整備などが欠かせません。
便利さを追求するあまり、セキュリティの視点が後回しになると取り返しのつかないリスクにつながります。
さらに、スタッフ間でITリテラシーの差がある現場では、研修やマニュアルが不十分だと活用が浸透しません。
操作に不安を感じたまま使われなくなるリスクもあるので、導入後の支援体制や相談窓口の設置が大切になります。
実際の運用フローとの調整も必要です。
AIを導入しただけでは現場が混乱する場合があるため、業務の見直しと現場スタッフの意見を踏まえた運用設計が求められます。